聖闘士星矢<セイントセイヤ>の二次創作小説です。 第一章 十二宮編 (4ページ)第二章 ジャミール編 (2ページ)第三章 ハーデス編 (6ページ) (サイドエピソード) 教皇の間のフィオナ (7ページ)遥か西方の果てに (4ページ)最終章 夢のあと (…
聖域、サンクチュアリ。 この日サンクチュアリは物々しい雰囲気に包まれていた。おこがましくもアテナの名を語る日本の少女と、サンクチュアリを裏切り、教皇に反旗を翻した青銅聖闘士たちがサンクチュアリに攻めてくる―― 教皇は十二宮を司る黄金聖闘士たち…
前へ:id:witchsanctuary:20120731 米粒ほどの人間達のざわめきが、この白羊宮にも伝わってきた。 「沙織さん!!」 貴鬼はフィオナの出現ですっかり忘れていたが、既に青銅聖闘士たちは到着していた。4人の聖闘士たちは、髪の長い少女を取り囲んでいる。白…
前へ:id:witchsanctuary:20120730 青銅聖闘士たちの激戦は幕を閉じた。仲間の犠牲を払いながら、ついに星矢は教皇を倒した。金色の光がアテナ神殿から沙織の下へ降り注いだその瞬間、黄金の矢は消え去り、アテナは死地から甦った。教皇サガは自らの罪を悔い…
前へ:id:witchsanctuary:20120729 それから数日後。 ようやく歩けるまでに回復したフィオナは、教皇の間に出向いて辞退の意を述べた。食事の配達に行ったきり、行方をくらましていたフィオナの突然の申し出に、同僚たちは止めることもできずただ呆然とフィ…
フィオナは後悔した。 何故、あの人に着いてこんな辺境の地へ来てしまったのか――。だが、全ては後の祭りだ。このジャミールからは、瞬間移動でもしない限り下界に戻ることは不可能なのだから。 あの日―― 十二宮からそう離れていない一軒家で、ムウに館へ来な…
前へ:id:witchsanctuary:20120726 「貴鬼!!」 ケタケタと高い笑い声を上げて、貴鬼はフィオナの箒にまたがり宙を飛び回った。正確に言えば、テレキネシスで箒を飛ばしているのだ。その上に貴鬼は危なっかしく乗っている。 「やめなさい、貴鬼! 怪我をし…
「アッ、ムウ様が帰ってきたあ!」 中国とインドの国境に広がるヒマラヤ山脈の中でも、山の民チベット族でさえ恐れて近づかないといわれる魔境の地、ジャミール。 岩山の上に聳え立つ五重塔から、赤毛の少年が顔を覗かせて叫んだ。見ると、黄金に輝く鎧を纏…
前へ:id:witchsanctuary:20120723 死の世界、冥界。 そこには一片の光も見出せない。吹きさらしの荒野がどこまでも広がり、冷たく重い闇が、亡者たちの苦痛の叫びを嬉々として呑み込んでいる。そこへ堕ちた者は、等しく永遠の絶望を与えられるのだ―― そんな…
前へ:id:witchsanctuary:20120722 嘆きの壁に刻まれた王と王妃のレリーフが、聖闘士たちのざわめきに耳を傾けている。 シャカはフィオナに目を向けた。フィオナも、そっと目を細めた。 「ペ・・・ペルセフォーネ?」 瞬が、その姿に身を乗り出した。 「そ、そ…
前へ:id:witchsanctuary:20120721 サンクチュアリ――― 地上に残った聖闘士たちは、刻々と進む日食に不吉な予感を覚えていた。もしかすると、このまま、二度と太陽が顔を覗かせないのではないか・・・。 「お姉ちゃん、早く。」 そのサンクチュアリへと続く岩肌…
前へ:id:witchsanctuary:20120720 ムウは駆け寄った。他の6人もフィオナの遺体を取り囲んだ。 美しい――。結い上げていた栗色の髪がはだけて、白い肩に柔らかくかかっている。固く瞼を閉じたその死に顔は、どこか、妖しい動悸を覚えるほど端麗なのだ。ムウ…
前へ:id:witchsanctuary:20120719 ここは… どこだ… 辺り一面に淡い霧が漂っている。その中を、デスマスクは行くあても知らず流れていた。 遥か昔… 決して思い出すことのなかった、母親の胎内にいた頃のことを、デスマスクははっきりと思い出した。自分が何…
「え…? カストロさんがいなくなった…?」 ギリシャ、アテネ郊外にある聖域、サンクチュアリ。ここは、神話の時代よりアテナ神殿を守護している、十二宮の頂に聳え立つ教皇の間――― その日も厨房から教皇の間へ食事を運んできたフィオナは、門番にカストロの…
前へ:id:witchsanctuary:20120716 フィオナが現れたその日のうちに、サンクチュアリ中に浸透しきった噂はやがて、少女が魔女であるという尾鰭をつけて聖域を泳ぎまわった。 「目の赤い少女」「この世のものとも思えぬ美しさ」「男を惑わす魔力を放つ者」「…
前へ:id:witchsanctuary:20120715 魔女が教皇の側近になった―― だが意外にもその報せは、門番と厨房の従業員、そして、教皇の間に仕える一部の雑兵にしか行き渡らなかった。と、言うのも、射手座の黄金聖衣をめぐる青銅聖闘士とサンクチュアリとの争いが、…
前へ:id:witchsanctuary:20120714 それから数日ののち、数名を除く黄金聖闘士たちが世界の至る所からサンクチュアリに集っては、自分が守護するそれぞれの宮に滞在していた。雑兵たちもどこか殺伐としていて、今、サンクチュアリは物々しい雰囲気に包まれて…
前へ:id:witchsanctuary:20120713 血の色の石段――― フィオナは箒にまたがりながら、双魚宮へと続く石段が、深い紅薔薇に覆われていることに目を見張った。フィオナの香気に勝るとも劣らぬ甘い薔薇の香りが、陶酔させる獲物を求めて空中をさ迷っている。 双…
前へ:id:witchsanctuary:20120712 「フィオナ!」 黄金聖闘士と、アテナ率いる青銅聖闘士との激闘が繰り広げられてから数日後。今や主人のいない教皇の間を依然として守護し続ける門番は、食事の配達に行ったきり戻ってくることの無かったフィオナの姿に声…
<魔女の定義>・ 古来の魔女 現代、魔女と聞いて連想されるイメージは、キリスト教の普及により定義づけられたものである。 本来、古代において魔女という言葉は無く、そのルーツは、自然崇拝を行う巫女、産婆、薬師などと考えられる。すなわち、彼らは豊作…
ヒュプノスはハーデス神殿を後にした。 エリュシオン。冥界と現世を分けるアケロン河の遥か上流、レーテ河の西方にあると言われる悠久の浄土。死後、神々に選ばれた者だけが暮らすことを許される、永遠の理想郷――― ハーデスに呼び出された眠りの神ヒュプノス…
前へ:id:witchsanctuary:20120708 何て、美しい女性なんだろう…。 フィオナは深い夢の奥で、光り輝く女性と出会った。辺りは霞がかっていて、その女性の顔もぼんやりとして見えない。しかし、この世のものではないその女性の輝きに、フィオナは心を打たれる…
前へ:id:witchsanctuary:20120707 黄金聖闘士たちが、聖域の黄金聖闘士たちを葬るために甦った――― フィオナは正気を失ったように、ふらふらと花園を歩き続けた。 (黄金聖闘士たちが…) 凄まじい頭痛が襲う。死した黄金聖闘士たち―― サガやカミュたち…? 脳…
前へ:id:witchsanctuary:20120706 フィオナは立ち上がった。等身大の鏡の中の、花嫁姿の自分に見入りながら。そして、静かにつぶやいた。 「―――…ペルセフォーネ…?」 不思議な感じだ。鏡の中の自分は微笑んでなどいないのに、その姿に重なって、ゆったりとし…
フィオナは叫んだ。声の限り。横たわる細い体を、わずかに起こして。 降るような星空が、このサンクチュアリを包み込んでいる。もう冬は過ぎ去ってしまった暖かい春の、静かな夜更け。フィオナは十二宮から少し離れたところにある一軒家の一室で、ひとりベッ…
前へ:id:witchsanctuary:20120703 誰かに揺さぶられて、フィオナは目を開いた。 あのまま、貴鬼の食器も洗わずに居眠りをしてしまったのだろうか? 長い夢を見ていたような感覚の中、呆然と振り返った先にあったのは、大きな瞳に不安をたたえた貴鬼の顔だっ…
前へ:id:witchsanctuary:20120702 「かわいそうに、かわいそうに。」 その日、サンクチュアリの郊外にあるロドリオ村から魔鈴に連れられてやってきたペラギアは、2年ぶりに再会したフィオナの姿を見た途端、ハンカチに顔をうずめてしまった。 「おばさんが…
フィオナによせる想い サンクチュアリにまつわるフィオナの物語はこれで終結を迎えるわけだが、無論、彼女の人生はこれからも続く。フィオナがどのような人生を歩んでいくのか、そして、彼女がサンクチュアリに至るまで、魔女の運命の下でどのような生き方を…
十二宮の戦いの日、ムウは真紅の瞳をした少女に出会う。 それは、古の時代に滅んだはずの魔女だった。 シャカに「大いなる闇の存在」と言わしめ、教皇サガには崇高な光をも見せた少女の正体は。 神々の天秤にかけられた二人のもとに、ついに大いなる運命が訪…