教皇の間のフィオナ4

前へ:id:witchsanctuary:20120714

 それから数日ののち、数名を除く黄金聖闘士たちが世界の至る所からサンクチュアリに集っては、自分が守護するそれぞれの宮に滞在していた。雑兵たちもどこか殺伐としていて、今、サンクチュアリは物々しい雰囲気に包まれている。

 「…教皇様は、ただ今沐浴をされております。少し、時間を置いてから来られるようお伝えしてください。」

 伝令にそう言い渡すと、フィオナは踵を返してサガが沐浴している場所へと向かった。側近がいなくなって散らかっていた脱衣所も、今は綺麗に整頓されている。フィオナは浴場の入り口の前に膝をつくと、幕越しに呼びかけた。

 「教皇様、先程、魚座と牡牛座の聖闘士様が到着されたとの報告が入りました。御二人とも教皇様への謁見を望まれておりますが…。お呼びしてもよろしいでしょうか。」

 「ウム…。すぐ出る故、控えているように伝えなさい。」 幕の向こうから低い声が飛ぶ。

 フィオナは返事をしてから、教皇の言葉を伝えに門の方へ歩いていった。

 あの日から、フィオナは変わることなく側近としての務めを果たしている。アイオリアの指摘したことを覚えていないわけではなかった。だが、もともと教皇を信じる意志が強い上に、あの後、失神していたフィオナを教皇が介抱してくれていたのである。アイオリアも己の否を認め、新たに教皇に忠誠を誓ったと聞くし、数日後の敵襲に備えて、出来るだけのことは力を尽くしているのだった。

 やがて日は過ぎ、青銅聖闘士たちがサンクチュアリに攻めてくるという日の前夜――

 明日は晴天だろうか。今夜も、数多の星座がサンクチュアリに降り注いでいる。フィオナは教皇の間の奥の、聖域を一望できるバルコニーに腰掛けて、教皇のマスクを清拭していた。

 静かな夜だ。とても、明日このサンクチュアリで死闘が繰り広げられるとは思えない。

 …おこがましくもアテナの名を語り、それに従い、サンクチュアリに反旗を翻した日本の青銅聖闘士たちが、今度は教皇を殺してサンクチュアリを我が物にしようとやって来る―― そう、フィオナはサガから聞かされていた。

 (無謀なことを…) フィオナはマスクを拭きながら眉をしかめた。何故、そこまでして教皇に反発するのか?彼らの力がどれほどのものかは知らないが、実力も、そして人数も圧倒的に違う黄金聖闘士相手に勝てるはずが無い。

 フィオナは、先日目の当たりにした黄金聖闘士同士の戦いを脳裏に描いた。まさに、大地が消し飛ぶかと思われるほどの破壊力…。相対するシャカとアイオリアが、シャカと青銅聖闘士に、青銅聖闘士とアイオリアとにすりかわって、2人の一撃の下に絶命する姿が目に浮かんだ。

 フィオナは手を止めて、マスクを膝に置くと満点の夜空を仰いだ。瞬く星々に隠れるように、今にも消えそうに灯る小さな星の姿が、まるで、明日その若い人生を終えようとする青銅聖闘士たちの姿に思えた。

 (どうか…) フィオナは胸のところで手を組んで、空を仰いだままそっと瞳を閉じた。 (どうか、死ぬ者がでませんように…。黄金聖闘士の方々が、殺さない程度に彼らを追い返してくださるように…) 閉じた瞼に、かつて、その身をもって味わった、残虐な光景が次々と甦った。

 もう、誰かが死んだり、傷ついたりするのを見たくない…。

 「誰を想っているのだ?」

 不意に背後でした声に、目じりから伝い落ちそうになった涙を振りほどいてフィオナは立ち上がった。見ると、沐浴を済ませたサガがワインを片手に立っている。フィオナは慌てて床に跪いた。

 「お済みになられましたか、教皇様…。おっしゃって頂ければ、ワインをおつぎ致しましたのに。」

 サガは薄く笑みを浮かべて首を横に振ると、今までフィオナが腰掛けていた椅子に座り込んだ。向こうの部屋からガウンをとってきましょうとフィオナが言うのをサガは手で制して、向かいの椅子に座るよう命じた。

 銀河の海が、2人の輪郭を浮かび上がらせた。どちらも星に目をやったままで、時折、サガがワインをすする音だけが、しんしんとした静寂を破っている。

 「教皇様…」 ふと、フィオナがきり出す。 「やはり、ガウンをとって参りましょう。そのような薄着ではお体にさわります…。」

 「いや、いい。今宵は温い。それに、中から温まるしな。」

 サガはグラスをフィオナに振ってみせてから、どこか哀愁の漂う目をして、ぼんやりと眼下の景色を眺めた。

 「…そういえば、さっき何かを星に祈っていたようだが…。何を願っていたのだ?」

 あっ、と、フィオナは目を伏せた。青銅聖闘士の無事を願っていたなど、口が裂けても言えない。

 「いえ… 別に… つまらぬことでございます。申し上げることでもございません…。」

 月光に妖しく浮かび上がる真紅の瞳を、サガは半ば探るように見つめて、やがて煌めく星々に向き直った。

 「おおかた、カミュのことでも想っていたのだろう…。」

 サガの突飛な発言に、フィオナは飛び上がった。新雪のように白く透き通る頬が、心臓の鼓動と共に美しく紅潮した。 (…なぜ?) フィオナはその小顔が胸にうずまるくらいに頭を伏せて、灰色のスカートを強く握り締めた。

 その心にカミュが住んでいることは―― 昔、詮索好きな主任に、不意をつかれる形で知られてしまってはいた。この間も、あれほど口止めしていたにも関わらず、同僚に知れ渡った。だが…。たかが厨房内での噂が、教皇の耳まで届くだろうか?例え、噂が厨房を飛び出し、教皇の間に仕える雑兵の間に流出したとしても、それ以前に、フィオナは教皇の側近になったはずである。それ以来、外部と教皇との取り次ぎは全てフィオナが行っているし―― 黄金聖闘士や伝令が教皇に謁見する時でも、常にフィオナは教皇の側に仕えていた。

 なのに、何故教皇はそのことを知っているのか? フィオナは急に、心の奥底までもが教皇に見透かされているような心地がした。だが、そうであれば、先程フィオナが何を願っていたのか知っているはずだ。そう思い直して、フィオナは動揺の色を浮かべたままサガの方を見た。

 「その髪留め―――」

 そんなフィオナの疑念を察したのか、サガはどこか可笑しそうに微笑みながら、フィオナの左肩に垂れる柔らかい三つ編みを指差した。つややかな栗色の髪に、真っ白な布が巻きつけられてある。

 「だいぶ前のものだから、かなり薄れてしまっていて今まで気付かずにいたが、その布にはカミュの小宇宙が染み付いているぞ。」

 はっと、フィオナは思わず布に手をやった。この2年、慈しみ続けてきた優しい感触が、フィオナの細い指先に触れた。

 静寂が辺りを包んだ。フィオナは髪留めに手をあてがったまま切なそうにうつむいて、サガは頬杖をついてその姿を眺めている。やがて、星々がわずかに傾いた頃、長い沈黙を破ってサガが問いかけた。

 「――その布は、カミュから…?」

 小さく、かすかに潤んだ目をしてフィオナは頷いた。それからフィオナは静かに、一人語りのように、澄んだ声で語りだした。

 「…サンクチュアリへ来て、まだ間もない頃――― そう、教皇様の食事係を命じられてすぐの事です…。あの日、私は盆を下げて厨房に帰ろうとしていました。当時は、まだ人目に触れることがすごく嫌だったから…。今思うと、馬鹿なことでした。でも、私はわざわざ遠回りをして、人のいない廊下を選んだんです。すると――……… 雑兵が数人、私をつけてきていて―― 本当に、廊下には誰もいなかったんです。…必死に抵抗しました。でも怖くて、腰が抜けて、悲鳴もあげられなくて…。」

 そこまで言うと、フィオナはきつく唇を噛み締めてうつむいた。その姿に、2年前の傷ついた蝶の姿を思い出して、サガも眉をしかめた。

 「でも」 フィオナの指が、再び髪留めに移る。

 「何故… あんな場所におられたのかはわかりません。でも―― 突然、雑兵が吹き飛んだかと思うと、カミュ様が現れて――。それからは、蜘蛛の子を散らすように雑兵たちは逃げていって…。」

 髪留めを握り締めてかすかに笑みを浮かべるフィオナの顔を、サガはどこか安心したような表情で見た。

 「でも、あの時、私は完全に気が動転していて…。抵抗した時、割れた皿の破片で怪我していたし…。それに……… 正直、今も、ですけど…。特に、あの頃はまだ男性へ対する不信が強くて…。だから、助けてくださったカミュ様まで、激しく拒否してしまったんです。それで―― カミュ様は傷をおさえるようにと、これを―― 手拭を、残して行かれたのです。」

 まるで妹の話を聞くような顔をして、サガはいつになくにっこりと微笑んだ。

 「そうか…。それがきっかけで、カミュを想うようになったのだな。」

 フィオナは恋を語る普通の乙女のようにはにかんだ笑みを浮かべて、しかし、何故か頭を横に振った。膝の上のマスクを指でなぞると、どこか焦点の定まらない目つきをしてぼんやりと宙を眺めた。

 「私…は、カミュ様のことをお慕い申し上げております。でも…。」

 マスクをなぞる細い指に、不意に力がこもったことをサガは見逃さなかった。

 「……手拭を触った瞬間、私の中に、広大な宇宙が流れ込んできました。とても優しくて、温もりに満ちた宇宙でした。…村で、教皇様に触れられた時のような、…孤独を、私の心に巣食う恐れを、深く包み込んでくれるような、深い安らぎを手拭から感じました。こんなにも、――こんなにも優しいのかと… 温かいものなのかと、心が一気にほぐれていって…。気がつくと、その場で手拭を握り締めたまま、声をあげて泣いていたんです。その手拭に触れていると、不安や恐怖も全て忘れることができて…。」

 降るような星空を、フィオナはそっと見上げた。

 「だから、生きてこられました…。」

 サガはその横顔を見守った。そしてフィオナの、フィオナなりの精一杯の恋を知った。

 ――この娘は、もう決して普通の乙女のような恋は出来ないだろう…

 フィオナのたどってきた凄惨な過去は、このサガでさえも救いの手を差し伸べることが出来ないほど、底知れない闇を心に植え付けている。その娘が、どうして淡い恋心などを抱けようものか。

 フィオナにとって、カミュを想うということは、それ自体が生きることに等しいのだ。教皇が、死よりも残酷な絶望の沼からフィオナを引き上げた存在ならば、カミュは、荒野の中で命を永らえるための水といおうか、太陽といおうか―― フィオナにとって、カミュへの想いは成就させるべきものではなく、生きるための糧、唯一の希望と言えよう。

 サガは瞳を閉じた。自分の役目は、とうに終わった…。やるべきことは、全て果たした。あと、フィオナを光へ導くためにするべきことはただひとつ―― 羽が癒えた小鳥を、籠から放ってやることだけだ。

 サガの正体を知る人は、何故フィオナにここまで思い入れをするのか不思議に思うことだろう。だが、サガにとって、フィオナは最後に残された唯一の正義だった。決して許されない大罪を犯したサガにとって、フィオナを光溢れる世界に戻してやることだけが、サガが正義を尊ぶ人間であったという、ただ一つの証になり得るからだった。

 月は更に高く上り、放つ明かりとは逆に、サンクチュアリを深い夜の闇へと誘った。そう長く経たないうちに、2つの人影はやがて消え、教皇の間にも静かな夜更けが訪れた。

 フィオナはのちの人生の中で、時折ふと思い出す。去り際に、教皇が見せた悲しげな微笑を。マスクを渡す時にかすかに触れた、教皇の指先の温もりを。

 時は流れる。その夜も、激動の一日に向かって刻々と時を刻んでいった。



 「着替えたか…。」

 翌朝、人の動く気配に目を覚ましたフィオナは、既に起きていたサガの命で側近の服から普段着に着替えさせられた。どうやらまだ夜も明けぬうちから、雑兵たちが呼び出されて出入りを繰り返していたらしい。緋の絨毯にはいくつもの足跡が散乱し、埃がせわしく空中を漂っている。窓から差し込む金色の朝日の光に、淡い黄色の服に身を包んだフィオナの姿が浮かび上がった。

 「……今日は… お前にも、ひと働きしてもらわなければならん。」

 サガはそう言って一息つくと、どこから持ってきたのか、作りの大きい箒を玉座の傍らから取り出した。フィオナは箒に目を見張った。それもそのはず、とうに捨てられてしまったと思っていた、愛用の箒なのである。

 「これは私が、お前の荷物の中から預かっていた物だ。」

 フィオナの細い腕に、サガの手から箒が渡された。数日振りに、箒の重みがフィオナの手を包んだ。 (何故、これを…?) フィオナが仰ぐと、サガはゆっくりとマスクを脱いでフィオナを見下ろした。

 「――お前は… 空が飛べるのだったな、フィオナ…。」

 一瞬、フィオナの眉が曇る。サガもそれを十分承知していた。このサンクチュアリにおいては、もはや魔女ではないと言った教皇自身の口から、魔女であることを確かめるような言動が出たからである。だが、眉をひそめてうつむくサガの顔に、フィオナは苦悩を悟って静かに頷いた。

 「…その能力を買って、やってもらいたいことが一つある…。」

 「はい…。」

 「宮にいる黄金聖闘士たちに、食事を運んで欲しいのだ。」

 フィオナは目を丸くしてサガを見上げた。昨日まで、あらゆる事を教皇の側で耳にしてきたフィオナなのだ。決戦のこの時、サガすらも禁じていた魔女という言葉を使ってまで側近に命じる用事というものが、食事の配達とはあまりにも意外、更に言えば、どこか拍子抜けしていたからである。

 しかし、サガは至って真剣な表情をしている。フィオナはその顔を半ば探るように見つめて、床の箒に目を落とした。低い声でサガは続けた。

 「既に知っているように、この教皇の間からは下にくだって、順に双魚宮宝瓶宮…と、第一の宮、白羊宮まで12の宮が点在している。そして今、青銅聖闘士どもの奇襲に備えて、9人の黄金聖闘士が控えているのだ。

  そこでお前に、食事を配達してもらいたい。雑兵でも構わんが、9人分の盆を抱えて石段を下るのは一苦労だ。それに、むさくるしい男どもに届けられるより、お前に届けられた方が彼らにも私の善意が伝わるというものだしな。――既に食事は厨房にて用意してある。お前は今から厨房に赴いて、9人分の盆を提げて配達に飛び立つのだ。…できるな?」

 フィオナはもう一度頷いた。教皇がどこか安心したような表情を浮かべると、少し間をおいてフィオナは問いかけた。

 「食事を届けた後は…、再び盆を回収して戻ってくればよいのでしょうか?」

 サガはそれには答えずに、立ち上がって2・3歩フィオナに近づいた。昨晩といい、いつになく悲しそうなサガの顔に、フィオナはひそと眉をひそめた。サガは、漆黒のローブを纏って跪くフィオナの前に佇んでいる。やがて、その端麗な口元が動くのを、フィオナは網膜に焼き付けるようにじっと見つめた。

 「…本来十二宮は、何者も宮を飛び越えることが出来ないように結界が張ってある。だが、今回だけは解いておいた。…青銅聖闘士相手にそこまで警戒する必要もなかろう。突然の訪問に驚く黄金聖闘士もいるかもしれないが、しかと、教皇の命だと言い渡すのだぞ。それから… まだお前が私の側近だということを知らぬ者に対しては、もし尋ねられることがあれば、食事係だと言いなさい。いいですね…。」

 「…教皇様…?」

 フィオナは思わず立ち上がった。言い終わるなり、サガが顔を手で覆って後ろを向いたからである。その広い背が、かすかに震えているのをフィオナは悟った。

 「教皇様… もしや、お体の調子が悪いのではないですか? もしそうであれば、やはり食事は雑兵の方に―――」

 「良い!」

 教皇のローブにフィオナの白い腕がかかった刹那、激しくはじかれてフィオナは危うく倒れかけた。サガは苦しげに息をつきながら、決して顔を向けないようにして再度厳しく言い放った。

 「私のことは良いから、早くお前は厨房へ行くのだ! そして、食事を宮の聖闘士たちに…。わかったら、今すぐにでもこの場を去れ!!」

 教皇の間へ続く門を守る門番は、不安げに眉を曇らせて出てきたフィオナを心配そうに振り返った。手には大きな箒を持って、足取りも頼り無げに厨房へと歩いていく。教皇の間へ食事を運びに行ったまま戻ってこなかったフィオナの姿を、急きょ命じられた食事の配膳に追われていた同僚たちは、どこか遠慮がちに横目使いをした。決戦への緊張からか、はたまた、教皇の側近になったことへの畏怖からか、詮索好きな主任でさえもまともにフィオナを見ようとしない。

 『愚か者め!!

 鉛のような空気が漂う教皇の間に、恐ろしく低い声が響き渡る。サガは息も絶え絶えに玉座の方へ這って行くと、震える手で椅子の手すりを握り締めた。

 『何故、あの娘を外に出した? お前は何をしたのかわかっているのか!!

 「わかっているとも…。」

 時折獣のようなうめき声を上げながら、サガはマスクに手を伸ばして深くかぶった。

 「フィオナは… 魔皇拳に侵されたアイオリア以外に、唯一真実を知る娘…。そのフィオナを、黄金聖闘士たちの元へ派遣したのだ。一人でもいい、し、真実に気付いてくれれば…。」

 『馬鹿な! 気でも狂ったか! もはや堪忍ならん。お前の好きにはさせんぞ! さあ、早く私と変われ!すぐにでも娘を殺す!

 「ぐああああぁぁーーーーっ!!」

 体に火がついたように、胸を掻き毟りながらサガは悶えた。だが、その強靭な意志は揺るぐことはない。

 『往生際の悪い! ここまで悪に手を染めながら、まだ抵抗を試みるか!

 「い… 今から宮を下っていけば、丁度アテナが到着する時刻に重なる…。フィオナは… っ…そ、そうなれば、あいつは白羊宮に留まらねばならん! 白羊宮は… 牡羊座のムウだ! やつなら真実を悟るはずなのだ! そうすれば… 他の黄金聖闘士たちも真実に気付けば… わ、私も……!」

 再びサガは悲鳴を上げて床を転がりまわった。激痛に引き裂かれんばかりの手は、扉の遥か向こうにいるフィオナの姿を求めて宙をさ迷った。

 「た、頼んだぞ…、フィオナァァァーーーッッ!!」

 教皇の間を抜けると、一面には朝日に照らされて輝くサンクチュアリが広がっている。9人分の食事を積んだ配膳用のカートをきつく箒に結びつけると、フィオナは一旦神殿を振り返って、やがてゆっくりと舞い上がった。

 空へと高く。12の宮の果てに待ち受ける、大きな運命の変動へと向かって…。

次へ:id:witchsanctuary:20120712